100% 嘘八百 ♪ PRINCEを愛するD&Pによる、PRINCEをめぐる妄想の数々


by DandP

メキシコの光  2  「小さなバタフライ」


 今日もたぶん、世界中のどこかのストリップショウで、プリンスの曲に合わせて踊っている女がいる。
見せることよりもむしろ楽しく、肉体をささえる筋肉は弾んでいるだろう。

 一人の女がメキシコにいる。
彼女が生まれたのはアメリカのミネソタ州。黒い肌に、透き通った瞳をしていた。
子供の頃から踊ることが好きで、ダンサーになるのが夢だった。経済的に通える程度のダンス教室に通い、オーディションも受けるつもりだった。14歳の時に妊娠と出産。しばらくするとベビーシッターに子供を預け、働かなければならないことになる。
ダイナーのウェイトレス、それが終わったあとは簡単なショウダンサー。やがてより多くの収入を求めてトップレスダンサーに。
お金が必要になったのだ。

小児ガン

医者に聞かされた子供の病名は、短かかった。
まだ5歳にもなっていない彼女の小さな娘は、ベッドに横たわり母親が来るのを待っていた。

 この病院で、彼女はまだ少年のプリンスに出会っている。
その一件については、また、追って書くことにしよう。
これは、彼女の物語によって、プリンスの「お衣装」を謎解いていこうとする試みなのだ。

 朝、仕事の帰りに病院で娘の顔を見て、それから家に帰って身体を休め、夕方、出勤の途中でまた病院による。そんな毎日を続けていた。
その昼間、娘が少年プリンスと交流を持っていることを、娘はうれしそうに話して聞かせた。もちろん、音楽のことなんて、まだなにも知らなかった。

 女はその後、夢はあったが結局ストリップティーズの仕事をし、歳を経るごとにステージのランクは下がっていく。
 最後に身に付ける小さな一枚布のことを「バタフライ」という。
ダンサーそれぞれにオリジナルのそれを作る。彼女のお気に入りは、紫のスパンコールに羽飾りのついたものだった。
場末た気分とは裏腹の、なんだか希望めいたその名前に、彼女は時々苦笑して、そして涙を流さないために口の端を少しゆがめる。

 けれど、仕事はけしていやではなかった。仲間はいつも楽しかったし、ライトをあびるのも悪くはなかった。音楽はいつも自分の楽しめる最高のものを選び、ダンスも怠ってはいない。

 やがて、キャットファイトショウに出演する。
ここではあまりスレンダーさは要求されないが、その分、ショウファイトとしての技術が必要だった。いわゆる女子プロレスだ。興行の旅は西海岸から南米へと続く時もあった。これもやがてはフリーキーなショウとなっていったが、彼女は恥じることはなかった。 
 彼女の身体に脂肪が細かい影を作る頃になると、出演からそれをプロデュースする側にまわった。つまりはその力量があったということだ。

40を過ぎ、50の声が聞こえる今も、彼女はプリンスを愛してやまない。
小さなバタフライが自分のなけなしの希望とプライドに思えて泣きたかった夜も、移動中のツアーバスの中でカクタスの林をぼんやり見ていたときも、彼女を支えていたのは音楽だった。
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by DandP | 2003-04-25 23:42 | - メキシコの光 -